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2015年11月16日

香りの創作について

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友人から依頼を受けたフレグランスミストを試作してみた。お話を聞いて浮かんだのは地中海の風景。笑顔にならずにはいられない青空と、鮮やかなターコイズブルーの海、切り立つ岩場の上には一面に広がる黄色い花。からりと乾いた温かな風、優しい大地のぬくもり、漂ってくる野草や花の香り。


「不滅、不死」を意味する黄色い花イモーテルを中心にレシピを組み立ててみた。太陽(helios)と金(chrysos)を語源とするイモーテル=ヘリクリサムは永遠の美を象徴する花だ。


自分でもおもしろいと思うのだが、香りのオーダーをいただくといつも様々な風景が浮かび、そこに時が流れて、景色や気配が変化していく。それをそのまま眺めていると、そこにふと一つの香料が浮かぶ。それを中心に置いてあげれば、レシピは自然に組み上がっていく。


だから、たとえばイモーテルが不滅を意味するとか、永遠の美を象徴するとかというのは、後から加えた説明でしかなくて、話をうかがいながら見えてきた景色の中に、その黄色い花は既に存在しているのだ。


もちろん、レシピは自然に任せるだけでは出来上がらない。景色の中の香りをそのまま再現するのではなく、そこに見えた物語を形にするために香りを組み立てていく。


だから、見えたそのままの花や木々の香りを必ず使うわけではないし、まったく異なる香りを用いて、その印象を作り出していくこともある。いくつかの記号を組み合わながら、幻から現を生み出していくような作業かもしれない。


ただ、いつも思うのは、まだ存在しない香りを作り上げているようでいて、その香りは、実は見えないところで既に完全な形で存在しているのではないかということだ。だから、私が成すべきことはといえば、その美しい形にできる限り近づくことであり、そしてそれは大抵、加えて、足して、組み立てていくというよりも、むしろ削ぎ落としていく作業となる。


「こういう香りを作りたい」という意図はあるが、話をうかがう中で見えてくる景色はわたしという意図を超えてやってくるし、そこで浮かぶ香料もまた意図して見出せるものでもない。しかし、その「既に存在する香り」に近づこうとする意図は必要で、それはまるで意図を超える意図へと手を伸ばしていくような行為だ。


そういう時に、アタマつまり知識で作ろうとすると、イメージの中に見た風景と物語は遠のいてしまう。そしてまた、その風景をただ再現するだけでは、見えないところで既に完成されて存在する香りには到達できない。だから、委ねながら意図し、意図しながら手放して、削ぎ落としながら組み立てていく。


そんな風にして、考えてもよくわからない作業と行為を重ねていくのは、とにかくおもしろい。香りを作らせていただけることは、本当に嬉しくて、ただありがたい。意図を超えるイマジネーションを、意図を超えて形にするのは喜びそのものだ。だから、いただく機会にいつも感謝している。


さて、今日も美しいイメージを描いていこう。


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